慣れると通常マウスが使えなくなると言われるトラックボールマウス。
そんなトラックボール界の王道ともいえるのがLogicoolのM575。トラックボールマウスという物を試してみたくて実際に購入して触ってみた。
今回はそのレビューをしようと思うが、有名が故単なるレビュー記事はごまんと存在するので外見とスペックはサラッと解説しつつ、本題としてこいつを分解しスイッチ性能やセンサーをチェックしゲームで使えるかどうかという観点を念頭にレビューをしてみようと思う。
因みに前ゲーミングトラックボールを紹介した記事があったがあれとは別物。game ballは予算オーバーで買えないのでM575を購入した。
外観とスペック
こちらがM575ow。カラーバリエーションは2種類あってオフホワイト(ow)とグラファイト(BGR)の2種類存在する。
普段普通のマウスしか使ってないから違和感しかないこの青い玉。上から見るとそうでもないが脇から見ると結構デカい。マウスにボールが入っているという異質な見た目だがその異質感が素敵。デザインも洗練されていて素晴らしい。
親指以外はあまり普通のマウスと変わらない形状をしているが、トラックボール操作を簡単にするための傾斜が存在する。ERGOの名を恥じぬエルゴノミクスデザインをしている。ボタンはホイールを合わせて5つ。(左/右クリック、戻る/進む、ミドルクリック付きスクロールホイール)
小指側は小指薬指を置けるくぼみがある。流石ERGO。
流石Logicoolと言った所か、デザインは非常にかっこよく、かつ人が使いやすいように洗練された形状。トラックボール初心者にもやさしい親指タイプのトラックボールとトラックボール界の一つの答えとして鎮座している感が凄い。
カタログスペックはこんな感じ。
本体サイズ | |||
トラックボールマウス | 高さ: 134mm | ||
幅: 100mm | |||
奥行き: 48mm | |||
重量: 145g | |||
USBレシーバー | 高さ: 18.7mm | ||
幅: 14.4mm | |||
奥行き: 6.1mm | |||
重量: 1.8g | |||
センサー技術 | |||
センサーテクノロジー:ロジクール アドバンス オプティカル トラッキング |
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公称値:400dpi | |||
最大値:最大2000 | |||
ボタン | |||
ボタン数:5個 (左/右クリック、戻る/進む、ミドルクリック付きスクロールホイール) |
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電池 | |||
バッテリータイプ:単三形乾電池x1(同梱) | |||
電池寿命(Unifying USBレシーバー使用時):最長24ヵ月 | |||
電池寿命(Bluetooth使用時):最長20ヵ月 | |||
接続タイプ | |||
USBレシーバー | |||
Bluetooth Low Energyテクノロジー | |||
ワイヤレス通信可能範囲:10mのワイヤレス動作可能範囲 | |||
カスタマイズソフトウェア | |||
Logi Options+ (macOS 10.15以降、および Windows 10以降) |
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サスティナビリティ | |||
グラファイトのプラスチック: 50%のリサイクル材料 | |||
オフホワイト: 21%のリサイクル材料 | |||
紙パッケージ: FSC™認定 | |||
保証情報 | |||
2年間無償保証 | |||
型番 | |||
オフホワイト : M575OW | |||
グラファイト : M575GR |
異質な形状とは裏腹にカタログスペックは至って普通のマウスと大差ない。
DPIは400~2000まで変更可能。同モデルの旧型M570だとDPIの変更が出来なかったためアップグレードした点になる。
公式ソフトウェアである「Logi Options+」で可能。DPI以外にもボタンのカスタマイズ等が出来る。
接続方法はBluetoothとUSBレシーバーと2種類選択が可能。マウス下部にあるスイッチですぐに切り替えが出来るのでPC2台で併用できる。
乾電池式なのは個人的にポイントが高い。乾電池1つで最大24カ月も持つので電池切れで使えなくなることはほぼ100%無い。バッテリー式は置くだけで充電出来るタイプやマウスパッドと連動して常に充電される物などもあるが高価だしバッテリーがへたった際に困る。長持ち且つへたらない乾電池式を選択したのは賢明。
分解
ゲーミングマウスとかだとセンサーの種類やスイッチの種類等をスペック表に書いている物が多いけどM575はオフィス用として販売しているモデルなのでカタログには詳しく載っていない。なので分解して調べる。
まずは玉を外す。
M575は三点支柱式を採用。滑りやすい素材の小さな支柱が3つあり設置面積を少なくすることで摩擦を減らしている。ダイヤモンドレベルに硬い素材らしいよ。
ボールは34 mmの青い奴。色が気に食わない人は替え玉も売っているので好みの色にしよう。
次はネジを外す。
裏側の滑り止めがついている部分を剥がすと出てくる。滑り止め全ての場所計5か所ねじ止めがあるのでネジを外す。外せば開くことが出来るが爪で8か所程度固定されているのでめちゃくちゃ硬い。力任せに開けると爪壊れるので慎重にはがす。
オープンするとこんな感じ。フレキが上に繋がっているので慎重に開ける事推奨。ボタン側、センサー側、メイン基板と3つの基盤で構成されている。
まずはボタン側からチェックする。
ボタン側は黒いプラのブラケットで覆われていてねじ止めされている。このあたりで作業していて思ったのが、このマウスめちゃめちゃ頑丈である。特にボタン回りのねじ止め数がとんでもない。黒いブラケットの固定とボタン回りだけで9か所もねじ止めされている。作りも割とコストかかってそうな作りをしているので利益率低そうだなーと思った。
そんな話は置いておきボタン回りをいざチェック。
これがボタン部分の基盤。どうやら右、左クリックのスイッチはkailh製マイクロスイッチが使われている模様。進む戻るボタンとホイールクリックは無名タクトスイッチ。
これが少し意外と言うか何というか、私以外にも分解されているブログ様があってそこではomron製マイクロスイッチが使われていたんだよね。
ロットによって違うのか何なのかはわからないが私のはomron製スイッチではなくkailh製スイッチが使われていた。
このKeilh製スイッチ、Keilh公式サイトに同じような物がない。茶色の軸にオレンジのプラカバーで下が黒のKeilhスイッチなんて見たことないし個人では購入できない企業用の物だったりするのだろうか。
外側にも何も記載が無いのでよくわからずじまい。残念。
今回分解した575owのスイッチはよくわからないので上記ブログ様で搭載されていたオムロン製スイッチの耐久性を話そうと思う。
D2FC-F-7NはD2F-01Fのメーカー向けバージョンらしく100万回クリックの耐久保証がされている。このD2FC-F-7Nには2つ種類があって200万回耐久保証verと100万回耐久verがあり、M575で搭載されているのは100万回耐久が保証されているバージョン。
100万回と聞くと凄そうだがスイッチの品質としてはごくごく一般的なレベルの物。ゲーミングデバイスメーカーのRazerが採用しているRazerオプティカルマウススイッチは9,000 万回とゲーミング用途の物と比べると差は一目瞭然。
↑Razerオプティカルマウススイッチを採用しているRazer DeathAdder V2 Pro
今回使われているKalih製スイッチも100万~200万回耐久レベルの品物だろう。ゲーム性能としては足りないかもしれない。ゲーム用途で使いたい人は交換してもいいかもね。
お次にメイン基板。
目立ったものは載ってない。右上にあるのがBluetooth兼2.4GHzのSoC。nRF52シリーズの一つ前モデルだと思われる。グレードとしては中間のグレードらしい。Bluetooth5.2に対応。
続いてセンサー側。
センサーはゲーム性能に直結する部分なので一番知りたかった部分だがこちらも型番がなくわからずじまい。分解で得られた情報少なすぎる。
MouseTesterでセンサーチェック
ゲーミングマウスのセンサー性能を図る目的で使われることが多いMouseTesterでセンサーをチェックする。
Bluetoothと2.4Ghz接続の両方を試し、それぞれ400、800、1200DPIで計測する。
MouseTesterの見方がわからない人の為に一応話しておくと、緑の線が実際に動かした部分で青い点が読み取ったポイントを指す。縦の波形は最高速度を示している。
実際に動かした部分と読み取ったポイントがずれているとセンサーの性能が悪く、最高速度程読取ズレが起きやすい。
上画像はDPI400時のMouseTesterの結果。上がUSB接続、下がBluetooth接続。
結論から言ってしまえばそんなに悪くないといった印象。1000msあたりで1か所カーソル飛びがあるがそれ以外はカーソル飛びが無い。ゲーム用途出ない商品という事を加味すると及第点である。
1200DPI時の結果。こちらはBTのみカーソル飛びが1か所存在する。
最後に2000DPIの結果。DPIを上げるほどカーソル速度が上がるのでセンサーによってはブレが起きやすかったりするがM575はそんなこともなく読み取りが出来た。
センサー自体はゲーム用途でも使えるぐらいちゃんとしていると見える。
細かい動作が出来ないのは難点でしかない
トラックボール全般に言える事かもしれないがMouseTesterの結果を見てわかる通り、どんなに滑らかに動かそうとこんな波形になるぐらい細かい操作は出来ない。
下画像は普段使っているRazerLanceheadのMouseTester結果がこれ。見てわかる通り曲線が滑らかになっている。というか普通のマウスはこんな風に滑らかに動かせる。
しかしトラックボールはそれが出来ない。M575のグラフを見てもらうと、偶にギザギザ部分がある。これは左方向に動かしているのにボールを動かしている過程で親指が誤って触れてしまうことが多く、右側に少し入力されるのでグラフがギザギザになってしまうのが原因。
どんなに細かく動かそうとボール自体が滑りやすくぶれやすいので親指で制御するのがマウスの10倍は難しい。ゲームで使用するにおいて滑らかな操作が出来ないのは痛すぎる。特にFPSで追いエイムをする時は体感で無理だと察する。
慣れたら他のマウスを使えない話は個人的に微妙
これは個人的な話だが、3ヶ月程度普段使いをして慣れたが結局普通のゲーミングマウスに戻ってしまった。
確かに腕を動かさないで済むので省スペースで疲れも感じにくいし細かい操作は慣れたら出来る。しかし操作精度は到底普通のマウスにはかなわないし、親指を酷使するので腱鞘炎問題は解決しないしでトラックボールを使う理由が個人的にあまりなくなってしまったのが正直な感想。120hzから60hzに乗り換えたら耐えられないあの感じと似てる。
ただこれに関しては本当に人によるのであんまり参考にしなくていい。
総評
そんなこんなで紹介させて頂いたM575owだが、センサーはカーソル飛びも少なくまずまずの出来、スイッチの耐久性は普段使いのマウスと同じ100万回耐久で本体の性能としてはゲーム用ではないがゲームは出来なくはない性能をしているといった所だろう。
トラックボールでゲームをしたい人は値段と性能を考えたらM575を選択肢に入れるのは割とありかもしれないがトラックボールで最強を目指したい人は2万強でGameballを買おう。
大前提としてトラックボールと言うもの自体滑らかに動かすことに特化していないので普通のマウスにはかなり劣る。プレイヤーの技量によっては補う事も出来るかもしれないが基本的に普通のマウスに勝つことは難しいだろう。個人的にはペンタブFPSの10倍難しく感じた。以上。
今回使用したM575
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